樹木医師の減農薬とコンパニオンプランツ
はじめに
日本は食糧自給が低くい国ですが、面積当たりの農薬使用量は世界でも多く使用しています。
【減農薬の必要性】
農薬は使用者への悪影響を与え、作物中で残留、環境中の多くの生物に対する直接的な影響、目的以外の生物を殺すなどの問題が指摘されています。
同じ農薬をたびたび使っているとその農薬が効かないことがあります。これを抵抗性や耐性と呼びます。また、畑の害虫を捕食する益虫は抵抗性がつくのに時間がかかると言われています。害虫を殺す目的で殺虫剤を散布したら、害虫は生き残り害虫の天敵だけが死んでしまうことがよくあります。
虫が植物を食べ、その虫を天敵が食べるといった関係を食物連鎖といいます。食うものと食われるものの関係はとても複雑で、天敵も他の天敵の攻撃を受けるなど、生態系は単純ではありません。「カマキリ」は「ヨトウムシ類」や「モンシロチョウの幼虫」などを食べます。「カエル」は「ハスモンヨトウ」などを食べます。「クモ」はさまざまな昆虫を食べます。
天敵がいなくなったとすると、害虫が増えて、強めの農薬を散布することになります。農薬の効かない害虫を出さない、害虫の天敵を殺さないためには農薬の使用をなるべく減らす必要があります。
【天敵の種類】
天敵は病気をおこす天敵微生物、害虫の身体に寄生する寄生性天敵、害虫を捕らえて食べる捕食天敵がいます。
・天敵微生物:(例)ヨトウムシの幼虫は緑きょう病菌に寄生されます。
・寄生性天敵(例)モンシロチョウの幼虫に寄生する寄生蜂(アオムシサムライコマユバチ)
オンシツコナジラミに寄生する寄生蜂(オンシツツヤコバチ)
植木屋の知恵袋
寄生蜂はアブラムシやコナジラミなどに卵を産み付けます。昆虫の内臓や肉を内側から食べて成長します。そして、昆虫の外皮を利用して内側で蛹になります。
この昆虫の外皮をかぶった蛹を「マミー」といいます。
アブラムシの天敵、クサカゲロウ
イモムシの天敵、アマガエル
コナガの天敵、ウズキコモリグモ
コナガの天敵、ゴミムシの幼虫
コナガの幼虫の天敵、ハエトリグモ
モンシロチョウの幼虫の天敵、アシナガバチ
アブラムシの天敵、ナナホシテントウムシ
植木屋の知恵袋
クモやヤモリはゴキブリ、ダニ、ハエ等を捕食します。トンボ、ゲジはカを捕食します。私たちからしたら益虫ですね。
【コンパニオンプランツ(共栄植物)】
植物どうしを一緒に植え、植物が他の植物に利益を与える場合、その植物を「コンパニオンプランツ(共栄植物)」といいます。組み合わせにより、病害虫や雑草の発生を抑制したり、土を肥沃にして植物の生産を高める働きが確認されています。
『おとり作用の利用』
コマツナやハクサイなどの根にコブを作る根こぶ病に対して、根こぶ病に抵抗性があるダイコンを利用します。作物の作付け前にダイコンを栽培すると、根こぶ病の被害を軽減できます。
『拮抗作用の利用』
ネギの仲間と野菜類を一緒に植える場合、ニンニク、ラッキョウ、ネギとキュウリやニガウリを混植して、つる割病を予防します。またニンニクやラッキョウをナスやトマトを混植して、青枯病や苗立ち枯れ病を予防します。
病気を予防するのは、ネギ類の根の表面に生息する微生物が生産する抗生物質や、ネギ類が出す抗菌物質の作成だといわれています。
『天敵の誘引作用の利用』
ハーブの一種ボリジは、ミツバチや寄生性天敵を呼ぶ植物として確認されています。イチゴと一緒に植えておくと、天敵を読んでアブラムシの発生を抑制してくれます。
ボリジがアブラムシに加害されると自分が攻撃されているというSOS物質を出し、天敵にアブラムシがいることを知らせるためと考えらています。
『忌避作用の利用』
キャベツまたはブロッコリーと一緒にトマトを植えると、キャベツ、ブロッコリーの害虫であるウワバの産卵を抑制できます。
『拮抗作用の利用』
ダイコンやスイセン等の作付けの前にマリゴールドを作付けすると、センチュウがマリゴールドの根に侵入します。侵入したセンチュウは生育や増殖ができなくなるといわれています。センチュウに効く殺虫成分は、つぼみに多く含まれるとして、花が咲いてつぼみがたくさんできたころにすき込みます。
『バンカープランツの利用』
ナスやピーマン畑の周囲に、ソルゴーやデントコーンなど背が高い植物を配置し、そくに発生する天敵に住みかとエサを提供します。ソルゴーやデントコーンに発生したアブラムシは天敵のエサになりますが、ナスは加害しません。この場合のソルゴーやデントコーンをバンカープランツと呼びます。
『害虫にエサを見えなくする』
キャベツやブロッコリーの隙間に、クローバーを混植すると、モンシロチョウ等の害虫が少なくなります。
ネギ、オクラやコンニャクの畝間にマルチ大麦をまいておくと、アザミウマやアブラムシが自分のエサ植物を見つけることができず、被害を軽減できます。
植木屋の知恵袋
植物は襲いかかる害虫に対して多様な生物活性物質を駆使して身の安全を守っています。それらは摂食阻害物質、忌避物質、殺虫物質などがあります。
テンマケムシで食害されたヤナギの葉でケムシを飼育するとケムシの生育が悪くなります。これはヤナギがケムシの嫌がるポリフェノールを摂食阻害物質としてつくりだすからです。また、被害木から隣接するヤナギに敵の襲来を知らせる警告物質を放出し、それを受けて隣接木も摂食阻害物質をつくるのが確認されています。
まとめ
ヨーロッパやアメリカでは農薬を使用に対する制限が日本より厳しいという傾向があるらしいです。家庭菜園は無農薬で作りたいむのです
野菜・草花・果樹・庭木の害虫がわかる本/根元久を引用させてもらいました。基本的に農薬に頼らずに育てるが基本になっている本です。とても分かりやすく、ためになる本です。天敵利用のはなしも面白いです。
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